福岡アジア美術館で開催中のアートたけし展にいってきた。パンフレットを以前からもらっていて、気になっていたものだ。 まずアートたけし展に行くににあたって、パンフレットに数点の作品がのっていたので、そのイメージの大きい版だと勝手に思っていた。 入り口には オフィス北野のごあいさつとして コメントが書かれていた。
ビートたけしの どの表現も実は、一枚のビジュアルが出発点になっています。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 中略 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 アートたけしの作品は、無意識あるいは無心に描いたものばかりです。「実はこんなことを感じていたのか」ということが自然に表れています。ビートたけし・北野武の、もっとも素に近い世界=「アートたけし」を、お楽しみただければと思います。 オフィス北野 代表取締役 森 昌行氏 あいさつの一部引用
なるほど、と。これで 益々、テレビのビートたけしとは違い もっと素に近い、シンプルな作品集的なものと思い込んで 入場してしまったのだ。ところが、その思いを全くくつがえす景色を その後、すぐ 見せつけられることになる。 入場口付近には、音声ガイドの申し込みコーナーもある。音声ガイドは山田五郎氏のアート目線のしっかり解説と、「ビートたけしのTVタックル」のメンバー江口ともみ、阿川佐和子、大竹まこと氏によるアートたけし勝手に対談の2部構成になっている。
音声の再生ポイントは、展示作品のテーマ毎に番号で 分かりやすく案内されていた。
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アートたけし展、その入場 直後のインパクト
その瞬間は、入り口を入ると突然おとずれた。その アートたけしの圧倒的な世界感が、壮大なスケールで幕を開けることになる。たけしが天国を解釈すると こう在るのだろうか。
こちらの作品は会場に行ってからのお楽しみにしてもらいたい。また絵と共に置かれたガラスのオブジェも たけし氏所有のものというこだわり様だ。 バックの広範囲にわたる絵をたけしが描いたとは驚きでしかない。その制作に 気が遠くなる程の時間を要したことだろう。
たけしが描くいろんなヘンな人たち
色々な分野で活躍する人間の姿を、アートたけしが描くコーナーがある。たけしにとって、人間はこう映るらしい。
それは、歌手、歌舞伎役者、スポーツ選手だったり、サーカスのピエロ だったり、それが 職業という枠をこえてインデアン? 遊牧民族?におよんで行き、もう奇想天外。 こちらは、キャンバスに油絵の具で描かれているようだ。

アートたけし展で 購入したポストカードの1部
そして そのイメージは 動物になり、 魚、海の生物へ、退化して恐竜...、かと思えばまた進化をしていく。
そもそもイメージするものなど ないのかも知れない。すると、突然 ネコの自動車? が現れ、その動物のくるま達の絵も楽しい。

写真は撮影可能な作品。たけしが作製したアートの一部(記事の内容と異なる)
たけしが描きたくなる3つのモチーフとは?
それは、カネとオンナとクルマ ということらしい。たけし流に シンプルに言い切っているのが気持ちいい。 この3つの関係を、飛びだす絵本のようにして強調している。確かに 絵にされると、妙に納得がいった。
女性と車と 人の関係って、着眼点が面白い。 男性の見栄を皮肉ったというよりも、その根底に流れる少年の純粋な心を感じる 優しいアートに思えた。そしてポルシェやクラシックカーなどのクルマのディテールが異常に細かった。たけしが、素直に そのクルマが大好きなのことが伝わってくる。
3次元にすることで表せる何か
古くなったビデオカメラのハンディカムがバラバラになって その基板までがキャンバスの上で踊る。さらに測りが、時計が、カセットのウォークマンが、カセットテープごとバラバラになってキャンバスに。
それは、静とも動とも表現できない不思議な立体の造形でありながら、平面図的でもある。 映画監督でもある北野たけしが、2Dと3Dの表現の境界線を、こうして模索しているのかも知れない。

「北野マンション」へ移動するためのタクシーなのだろうか。助手席の乗り込んで記念撮影ができる。(記事の内容と異なる)
そんな中で、突然 ウクレレを持つ人が現れたりする。 そして、何なのかわからなくて目を凝らすと、それは いろんなタイプの輪ゴムに色が塗られたものだった。こんな日用品までもアートの世界に取り込んでしまうわけだ。
フランスの最高章の勲章を見たことがあるか?
この名前を聞いて ピンと来るだろうか。
- 金獅子
- 銀獅子
- コマンドゥール
- シュヴァリエ
これは 北野武氏が 海外で受賞した功績である。
- 金獅子 は、北野武監督作として「HANA-BI」で ヴェネツィア国際映画祭 最優秀賞、グランプリを受賞したときのもの、金の獅子が細かく造形されており、渋く年期が入ったトロフィーという感じがした。
- 銀獅子は、 「座頭市」で受賞したもので、金獅子と違って ツルッと凹凸が省かれた シンプルな造形の獅子になる。金と銀でデザインが変わるのは、受賞年度で 像のデザインが変わる為だろうか、サイズは 金と銀でほぼ同じ感じだった。
- コマンドゥール は、フランス共和国政府が選出する、もっとも権威のある芸術文化勲章の中で最高章である。これを直視できたのは ラッキーだった。テレビのニュースで流れた、フランスの授与式でミッテラン文化相から、たけしの首に掛けられたものと同じものが そこにあった。
- シュヴァリエ フランスの芸術文化勲章の最高威コマンドゥール、オフィシエ、それに次ぐ章。

画像はアートたけし展の「北野マンション」の住人たち。
こうして、みると アートたけしは、すでに 世界を代表する屈指の芸術家だったわけである。
たけしの版画
彫り、刷り、塗る世界
木こり達の版画 の線が細かい。ヒョウもいい、花火の演出もあり。 版画は、他の絵と違い、薄い色出しで マンボウ、アンコウも繊細だ。
フクロウ、そして 猫が金魚を取ろうとしている版画のタッチがいい、畳目のきめの細かさ、 味のある和ダンスと その上の高級そうな壺、壁にかかった赤富士、平面ガラスに木の縁取りがついた金魚鉢。それは、いつ頃のものだろう。
ぜひ 現物で味わっていただきたい。その版画は、阿川佐和子さんも絶賛しており、会場の出口近くで販売もされている。それは 原画を「ジグレー技法」で忠実に再現したものらしい。リファレンスナンバーが印されて、サインも含めて精密に複製したもの。 すべての臨場感を凝縮して49,680円(税込)だった。

「キタノ マンション」の住人達の 1つ部屋
東京オリンピックの聖火ランナー
北野たけしと、ビートたけしと、アートたけし、
それは 2020年の東京オリンピックをイメージしたのだろう。聖火をもった着ぐるみのランナーはいったい何者なのだろうか? 見ているこちらもワクワクしてくる絵だ。
おそらく新競技場のスタンドの看板にはドンキホーテ、 NTT、 SOFT BAN(K)の ここまでスポンサーが既に書いてある。また 聖火台まで走るコースが矢印で描かれていているのは面白い。東京オリンピックがくるまで毎日楽しくなりそうな絵だ。

「キタノ マンション」は、様々なキャラクターが、思い思いの生活を送っていそうだ。
キタノマンション入居者募集中
そして、たけしの企画は 作品の展示だけでは終わらない。会場の外に、子ども達が参加できる仕掛けが用意されていた。それは 自分の絵を描いて、キタノマンションの住人に申請できるというもの。 そこには住民票?のような、画用紙とクレヨンなどが用意されている。
もう既に、続々と部屋が埋まってきている様だ。まだ若干の空室があり、キタノマンションでは 現在も 入居者を募集中だ。
アートたけし展 福岡アジア美術館 まとめ
- 熱心な客層がで アートたけしをリスペクトしている人で賑わう
- 有料の音声ガイドを利用する人が多いのにビックリ
- 女性一人で来場している人が多い
- 入場して すぐに現れる絵は、とにかく圧巻
- お笑いの要素ぬきで 純粋にアートで勝負しているところが凄い
- フランスの勲章やベネチアのトロフィーを生で見る機会は、この時しかないだろう
- 客層40、50~60代が意外に多かった。親子で見に来ている人もいる
- 芸術性が高いのはもちろんのこと、今回の個展は、たけし自身が発案者と言うから驚きだ
- 展内に流れるデモ映像で、自身の個展を訪れた時のコメント「いっぺんに見ると迫力があるなぁ」(※およその内容)
- たけしが無心で描いた作品のため、ほぼ すべての絵にタイトルは付けられていない
- 子どもが参加できる企画もあり。自分の絵を描いてキタノマンションの住人になろう
アートたけし展 会場 福岡アジア美術館
福岡県福岡市博多区下川端町3−1
開催期間 2016/09月3日〜10月10日(月祝日)まで
開場 10:00〜20:00 休館日水曜日 主催 毎日新聞社 九州朝日放送/共催 アートたけし実行委員会 企画監修=オフィス北野 企画協力=アシックス
観覧料:一般1,200円 高大生800円 小中生500円
北野武、ビートたけし、アートたけし、そのすべてのファン、そして絵が好き、芸術が好きな人にぜひ見ていただきたい。
きっと、期待を いい意味で裏切ってくれるはずだ。そしてあなたは言うだろう「これを、あの たけしが描いたのか!?」と。そして、たけしを偉大な芸術家として認識させられる機会になると思う。